魔法のコンパス 道なき道の歩き方 西野亮廣著

なんだろ、この本。ふと手に取った。でもあれか、芸能人が書いたビジネス本か。
あー、どうしようかな。迷いながらもレジを通したその本は、その後の彼の人生をより面白く、より刺激的にするものだった。

 

――それはまるで、冒険の書のようなビジネス書。

 

箱根駅伝はなぜ面白くないのか」という、箱根駅伝ファンに聞かれたら、間違いなく怒られそうな衝撃的な話から始まり、お金の正体、はたまた戦争がなくならない理由まで。

 

全ての発想が新しいーーいや、知ってはいたけど考えていなかったことであり、それらは全て自身がやってきたことなので説得力は尋常ではない。

 

行動しなければ意味はないし、考えなければ始まらない。

 

今の自分に、状況に、会社に、世界に、何かもやもやしたものを感じるのなら、この本を手に取るのもいいかもしれない。


「ドキドキしながら仕事してる?」

 

1ページ開く毎に新しい考えが自分の中に生まれてくる。この西野亮廣という男はなんて楽しそうに生きているんだ。次の一手として、何を考えているんだ。
想像するとこっちまでドキドキしてきた。

「俺は西野亮廣さんのファンではない。断じてない。」誰に言い訳するわけでもないのにぶつぶつと呟きながら、彼はその本をお勧めの本としてこの図書館にそっと置いた。

よるのばけもの  住野よる著

「君の膵臓を食べたい」が大ヒットした住野よるさんの3作目の作品…だと思うんですけど、俺はこれが初めて読んだ住野よるさんの作品でした。

なんとなく、大ヒットしすぎてる作品を敬遠しちゃう感覚って誰でも持ってる気がするんですけど、もろにそれが出ちゃって…あえて読んでませんでした。

いやぁ、もったいないことをしてたなぁ。まさかこんなに素敵だとは!

たまたまその頃、本離れをしていて、大丈夫かな、と思ったんですけど、するするするっと物語が入ってきて。軽快なんですよ。


僕、あっちーは、夜になると「化け物」になる。

体から一滴の黒い粒がこぼれたかと思えば、それは湧き出るように溢れ出す。
そうして僕の体を覆いつくし、よるのまっくらの中には、もう一つのまっくらが生まれる。

化け物の僕が、深夜の学校で出会ったのは、いじめられっ子の矢野さんだった。

 

昼の僕と、夜の化け物。

化け物の僕と、人間の僕。

矢野と話す僕と、無視する僕。

 

ずれているのは、よるのばけものか、それとも――。

 

学校という世界を苦しくなるほどリアルに、そして美しく描いた一冊。


なんか勇気がわいてきたんですよね。だからこの図書館に寄贈しますね。
オススメの一冊、ってことで!

コーヒーが冷めないうちに 川口俊和著

大学受験の勉強中に息抜きとして、ブックカフェでコーヒーを頼んで、本を探しに出かけた時に手に取ったのがこの本でした。コーヒーカップを傾けながら、優雅に読書タイムを決め込もう思っていたのですが……ボロっボロ泣きました。優雅さのかけらもありませんでした。
いままで、映画やTVなどを見て泣いたことのない僕は初めての経験にびっくり。ただ、読んだ後のすっきり感は忘れられません。

 

とある街のとある喫茶店の、とある座席には、不思議な噂がありました。

 

その席に座った者は過去に戻れる――

 

そんな不思議な噂に引き寄せられて、4人の女性が喫茶店フニクリフニクラに訪れます。

『恋人』、『夫婦』、『姉妹』、『親子』、喫茶店で起こる小さな奇跡の物語。

 

彼女たちは何を後悔し、何のために過去へと旅立つのか。

 

何も変えることなんてできない。

 

助けることなんてできない。

 

それでも、彼女たちは「過去」へ戻り、もう一度、「今」を生きる。

では、いってらっしゃいませ。必ず帰ってきてくださいね。

 

コーヒーが冷めないうちに。


切ないけれど愛おしい。悲しいけれどあったかい。そんな本と出会えてよかったなあ。

なので、この本を僕はおススメの一冊としてこの本棚に置いていきますね。

 

サラバ! 西加奈子著

3部作ってちょっと気が重いなあ。僕もそう思ってました。

それでも、直木賞を取ったこの本が気になって仕方がなくて、「嫌だったら途中で止めればいいんだし。」そう思って手にとった本をダメだと思いながらも、道で歩きながらも読んでしまったし、風呂に入りながらも読んでしまって…。
もし、長編の本を読んだことがあまりない、最近読んでない、という方は、ぜひ「サラバ!」を読んでいただきたい。この本だけじゃなく、長編の本も好きになるはずだから。


僕はこの世界に、左足から登場した——

生まれた時から、僕は彼女に振り回されて生きていくことが決まっていた。それは彼女が、人一倍「かまってほしい」という願望に取り憑かれていたからであり、どの場においても一番のマイノリティになることを望んだからであり、我が家をかき回す猟奇的な姉、「圷 貴子」であったからである。

 

イランから日本、カイロ、エジプト、様々な国へと渡り、少しずつ成長していく僕の、出会いを重ねる僕の、別れを経験する僕の。

 

…………僕の、物語だ。

 

——あなたが信じるものを、誰かに決めさせてはいけないわ。

 

この本は、人生。

 

 

この物語は、一人の男(、あるいは人間)の人生を、そのまま紙に写し出してるみたいなんです。
小説を読んでいるのに、読んでる間、「現実は小説より奇なり」という言葉がなんども浮かんでいる。
そんなこの本を、僕はここにオススメの本としておいときます。

四畳半神話大系 森見登美彦著

全く、何故私がこんなことを書かなくてはならないのだ。わかった。わかったわかったわかった。わかったよ!えー、コホン。おすすめである。

 

……何だその目はっ!五月蝿い!文章を書くのなんて得意じゃないんだ仕方なかろう!

 

 

何故、何故私の薔薇色のキャンパスライフは幼子が吹くシャボン玉のように、手ですくい取った水道水のように、あるいは、鴨川で等間隔に座り確かめ合ったカップル共の愛のように、儚く消えてしまったのだ。

 

そして何故、私はこの世で最も唾棄すべき男、小津と出会ってしまったのか。

そもそもの間違いは

 

1.映画サークル「みそぎ」

2.樋口師匠の弟子 

3.ソフトボールサークル「ほんわか」

4.秘密機関〈福猫飯店〉

 

に入ったことなのだ!

あの選択さえ間違えなければ、薔薇色のキャンパスライフと黒髪の乙女を手に入れ、小津とも出会わず、こんな汚い四畳半にも住んではいないはずなのだ!

 

…おそらく。

 

4つの並行世界を舞台に、冴えない大学三回生の「私」が踠き、苦しみ、恋をする。

 

どうにもこうにも下らなく。それでもなんだかほろ苦い。

 

そうして、四畳半神話の扉は開かれる。

 

 

まぁ、なんだ。私はこの下らない世界が好きなのだ。

もし貴君も気に入ったのなら共に朝まで語り合おう。

 

天狗ブランでも傾けながら。

めくらやなぎと眠る女 村上春樹著

そこの貴方。短編小説は好き?それとも長編小説が好き?

別に答えられなくてもいいわ。人間には考える時間が必要な時もあるものね。

そもそも、こんな質問に意味なんてないのよ。この本を前にしたらね。

 

「BLIND WILLOW,SLEEPING WOMAN」
それは、海の向こうの国にいる読者のために編まれた短編集。

二十歳の誕生日、ウェイトレスは謎に包まれたオーナーに料理を届けることになる。——バースデイ・ガール

僕とイズミは全てを捨てて、ギリシャに来た。「あなたはわかってないみたいだけれど、私たちもう日本には帰らないのよ」——人喰い猫

「僕は昔、毎日つづけて四十日間吐き続けたことがあるんです。」——嘔吐1979


「めくらやなぎっていったい何だよ?」
「そういう植物があるのよ」
「聞いたことないね」
「私が作ったんだもの」、彼女は微笑んだ——めくらやなぎと、眠る女


ジャズの香りを感じながら、今、本の世界へ。

 

私、短編って好きよ。なんか儚くて、淡白で、それでいて不思議なの。
あなたも短編の森に迷い込めばいいのに。

私のおすすめの一冊を入り口にね。

砂漠 伊坂幸太郎著

ねえねえねえ、この本読んだ?読んでない?
残念、だったら信じられないか。


僕は気がつけば大学生になっていた。

飲み会で話すようになった、といういかにも大学生らしいきっかけで仲良くなった鳥井に誘われた確率と中国語の勉強。(つまりは、ただの麻雀だ。)

そこにいたのは、同じ大学の西嶋、東堂、南だった。

「そういえば麻雀って、4人でやるんだよね。でもって東西南北に振り分けられる。」
「鋭い」
「僕が呼ばれたのって、名字が北村だからとか、そういう理由じゃないよね。」
「正解!おめでとう!」

これは、ある意味、出会うべくしてであった五人の春夏秋冬の物語。


——俺たちがその気になればね、砂漠に雪を降らすことだって余裕でできるんですよ。

 

私この本好きなんだよね。
もしよかったら読んでみて。おすすめの一冊だから。

彼女はそう言って席を立った。
彼女が座っていた椅子の下には、ぐにゃぐにゃに曲がったスプーンが一本、隠れるように落ちていた。

 

なんてことは、まるでない。